飲食店開業"資金"のリアル ~業態別の目安と準備のポイント~

飲食店を開業するには、「アイデア」「情熱」だけではなく、しっかりした資金計画が必要です。
ここでは、業態別の費用例も示しながら、資金をどのくらい準備すればよいかを整理します。

1.開業資金の主要な構成要素

開業資金は、大まかに以下の項目から成り立ちます。

  • 物件取得費(保証金・敷金・礼金・前家賃・仲介手数料など)
  • 内装・設備工事費(スケルトン物件なら工事が多い/居抜きなら工事を抑えられる)
  • 厨房機器・家具・什器備品費(調理機器・冷蔵庫・テーブル・椅子など)
  • 備品・消耗品・食器等
  • 広告・宣伝費(開店準備・オープン時プロモーション)
  • 運転資金(売上が安定するまでの人件費・仕入れ・光熱費など)
  • 生活資金(経営者自身・家族の生活費を一定期間カバーできる額)

2.業態別・実際の費用目安

以下は典型的な業態について、「坪数」「席数」「スケルトン/居抜き」「新品/中古品」など条件をある程度想定した上での費用例です。
あくまで目安として、立地や仕様次第で大きく変動します。

業態規模・条件主なコストの例開業時資金の目安
居酒屋10坪
席数10〜16席
スケルトン
新品仕様
・物件取得
 200万円
・内外装工事
 約705万円
・家具
 約42万円
・厨房機器
 約170万円
・調理道具・食器など
1,200〜1,300万円前後
ラーメン店10坪
席数9〜15席
スケルトン
新品仕様
・物件取得
 200万円
・内外装工事
 約742万円
・厨房機器
 約185万円
・備品・食器等
(新品仕様で揃える場合)
1,200〜1,300万円
カフェ
喫茶店
10坪
席数10〜18席
スケルトン
新品仕様
・物件取得
 200万円
・内外装工事
 約671万円
・厨房機器等多め
(ドリンク設備等)
・家具・食器等
1,200〜1,400万円前後
焼肉店中程度規模
(20〜30席)
スケルトン物件
・物件取得
 300〜400万円
・内装工事
 700〜2,800万円
・厨房設備
 300〜1,300万円
・備品・広告等
1,300〜5,000万円程度の
初期投資が必要なケースが
ある
焼肉店
※運転資金含
上記に加えて
開業直後の運営期間
・運転資金
 月300〜700万円程度
 人件費・食材・光熱費等を
 3〜6か月分確保することが
 望ましい

 

3.居抜き vs スケルトン:コスト差の例

  • 居抜き物件なら、内装・厨房設備の一部がそのまま残っているため、内装・設備費用を4分の1程度まで抑えられる事例があります。
  • 居抜き物件の 造作譲渡(内装・設備の譲渡費用) は、物件の状態や内容によって 数十万円〜数百万円。条件によっては無料のものも。

4.資金を抑える工夫と注意点

  • 中古機器・リースの活用
    厨房機器・家具などを新品で揃えるとコストが高くなる。中古やリースを取り入れることで初期負担を軽くできる。
  • 居抜き物件の活用
    居抜きなら内装・設備の一部・前テナントの什器等が活かせるが、設備の老朽化や修繕コストも考慮が必要。
  • 規模の調整・段階的開業
    席数を少なめにする・営業時間を限定する等で、必要な初期投資および運転資金を抑制。
  • 余裕を持った運転資金の確保
    売上が立たない時期を想定し、最低3〜6か月分の運転資金+経営者の生活費を準備する。
  • 補助金・制度融資の検討
    創業支援融資、日本政策金融公庫、自治体の助成制度など活用可能なものを調べ、自己資金の負担を軽くする。

5.まとめ

飲食店開業において成功する第一歩は、「リアルな数字をもとにした資金計画」です。
業態ごとのコストの差を理解し、自分が目指すスタイル(規模・立地・内装レベル等)に応じて見積もりを複数パターンつくりましょう。
そして、自己資金の割合、融資返済計画、運転資金・生活費の確保、補助制度の利用。これらを含めた総合的な資金戦略が、開業後の安心・継続につながります。
当事務所では、こうした資金計画の立案支援、収支予測モデルの作成、融資相談等でお手伝い可能です。

お気軽にご相談ください。

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